中国人インバウンド消費① 「免税店」市場とは

前回、「爆買い」は終わったのか?では、2017年の訪日中国人観光客による日本での買物の合計金額は、「爆買」が始まった2015年よりも、増加しているという調査結果を紹介させていただきました。今回は、その購買行動について更に考察していきたいと思います。

訪日中国人観光客の購買行動を、大きく三つに分けて考えていきたいと思います。①団体旅行客による購買、②個人旅行客による購買、③購買代理人による購買(以下代購)の三つです。

今回は団体旅行客による購買を見ていきます。団体旅行客の購買行動で特徴的なものは、クルーズ船で来日する中国人観光客の購買行動です。上陸した港から「免税店」と呼ばれる旅行会社と提携関係にある団体旅行客専門の小売店まで大型バスで移動し、そこで買物をしています。この免税店の大手は5社ほどありますが各社の売上を合計すると、その売上規模は年間約2,500億円程度と言われています。訪日中国人観光客による買物金額全体の約9,000億円の、約28%程度に該当します。2017年の百貨店93店舗の免税売上全体が2,700億円です。これは、中国人によるものだけでなく、免税売上全体で、世界中のインバウンド旅行者からの実績ですので、中国人に絞った際に、最も大きいのがこの免税店市場になるのではないでしょうか。

近年団体旅行から個人旅行にシフトしていると言われていますが、このクルーズ船による訪日客数は2017年の実績で約250万人となっており、かつ年々増加傾向にあります。国土交通省は、今後2020年までに500万人を目標にするとしており、今後も増加すると予想されています。クルーズ船による訪日客数の国籍の内訳までは公開されていないようですが、主に中国からの客数が増加しているとされており、実際免税店各社の売上は増加傾向にあるようです。

この市場は、非常に特殊な市場です。よく中国人観光客は事前に「買物リスト」を作成し、購入するものを決めて訪日していると言われています。しかし、この市場では、購入する商品に対して旅行に同行するガイドや免税店の店員が強く影響を与えていると言われています。ガイドや免税店スタッフのお奨めする商品も売れ筋となっていくのです。

そのため、この市場を攻略するためには、ガイドや免税店と協力関係を深め、ガイドや店員への商品情報の共有や販売の動機付け等を積み重ねていくことが非常に重要になってきます。

実際、弊社の取り扱う商品においても、店員やガイドへ商品説明等の施策を徹底的に行うことで、急激に売上を伸ばした商品があります。こちらの商品は、中国国内での事前プロモーション活動等は一切行っていない、訪日中国人にとって全く知名度のない商品でしたが、実績を上げることができています。その意味では、この販売チャネル自体が商品の知名度を周知するためのプロモーションの意味も兼ね備えたチャネルになりうるのではないでしょうか。

免税店市場は、訪日中国人のインバウンド買物市場の約3割を占めると推計され、大きなな割合を占めるだけでなく、プロモーションの上でも重要な位置付けを占めています。この市場にどう向き合い、アプローチしていくのか、中国人向け販売戦略を組み立てる上では大きなテーマになると考えています。