中国進出の基礎知識 中国進出の四つの方法② 越境EC(2)

中国向け越境ECで販売するには?

中国向けの越境ECで販売していくにはどのような方法があるのだろうか?中国の場合グレートファイヤーウォールと呼ばれるインターネット上の制限が存在するため、日本でEC運営する方法の延長で考えてもうまくはいかない。

中国国内のネット環境は中国政府に監視されており、またアクセスできる内容も政府が監視しやすい範囲に限定されている。そのため、中国国外のサーバーへのアクセスは制限されていたり、極端に遅かったりする。

また、中国国内の検索エンジンは、国外の情報については検索対象とはしておらず、中国国内のサーバー登録がある内容のみが表示されることになる。そのため、日本国内のサーバーで中国語対応したECショップを設置しても、百度などの中国国内の検索エンジンでは検知されない。Googleは中国国内ではそもそも使用できない。

そのため、日本国内のサーバーに中国人の集客を行うのは容易ではなく、中国越境ECで販売するための方法としては、①中国国内にサーバーを保有し、ネットショップを開業するか、②越境ECモールに出店するか、③既存の越境ECショップに出店している企業と取引するか、のいずれかの方法になる。

中国国内にサーバーを保有し出店する

中国国内のサーバーをレンタルすることはそれほど難しいことではない。しかし、そのサーバーを使用してECショップを運営するためには、中国政府の許可が必要になる。具体的には、営利目的のICPライセンスというものが必要になり、このライセンスは中国国内に設置された企業にのみ付与されるし、外資系企業がこの許可を取得することはほとんど不可能と言われている。

そのため、多くの企業では現地企業との合弁会社等を設立し、現地代理企業の名前でこのICPライセンスを取得し運営している。

ただ、この方法であっても保税区にECショップを開設することはなかなか難しいため、方法としては直送方式になってしまい、販売できる商品は物流費の制限を受けることになってしまう。

越境ECモールに出店する

越境ECモールとは、天猫国際や京東国際などが有名だが、保税区にてECモールとして運営を行なっている中国企業のサービスを利用する方式である。利用者は、これらのECモールへ出店という形でECショップを展開することが可能となる。

これらのモールは独自の厳しい出店ルールを設けており、出店に際しブランドに対する審査もあり、出店のハードルが高いモールもある。一方、その分消費者からの信頼も厚く、海外のものであってもほぼ偽物がないという認識のようで、安心して購入されているようだ。

こちらに出店する際には、ほとんどの場合運営代行業者を通じて出店されている。運営代行業者とは出店者に代わり、ECショップの制作・サイト運営・問い合わせ対応・受発注・プロモーション活動を代行してくれる事業者のことで、日系・中国系含め複数の代行業者が存在している。

代行業者に依頼をかける場合は、モールへの出店料に加え、代行業者への手数料が固定費・変動費含め必要になる。また、出店しただけでは商品が売れる訳ではないため、日本国内のECモール同様、モール内集客のための広告宣伝費が必要になってくる。

どのような越境ECモールのプレイヤーが存在するのかについては、章を改め別途解説したい。

既存の越境ECショップに出店している企業と取引する(出品する)

この方法は、既に越境ECモールに出店している企業に商品を販売し、出品という形式で越境ECに参加する方式となる。この場合、運営代行費用等は発生せず、出展者との商品の国内の売買のみで完了するため、もっとも手間もコストもかからない方式となる。

ただ、商品自体が出店者が扱いたいと思うような魅力や実績を持った商品である必要があるし、中国人消費者への知名度が低い商品については、販促費の協力を依頼されるケースもある。

まとめ

越境ECへの出店方法の三つについて述べてきた。通常の選択される方法は、②越境ECモールに出店するか、③既存の越境ECショップに出店している企業と取引するか、のいずれかが選択されることが多いと思われる。

どの方法が自社にとって最適な方法なのか、それは越境ECの目的や、会社の規模・中国への進出具合や投資の優先順位等によっても異なるであろう。例えば、まだ進出初期の段階であれば、自社商品の反応を把握するために、まずは既存ECショップ出展者企業へ商品を卸、反応をみて次のステップに進めていくという方法もあるだろう。

ある程度国内でもブランド力のある企業であれば越境ECモールに旗艦店を出店しブランド力を高めることを目的に、マーケティング投資して出店するという場合もある。

いずれにせよ、どの方法も一長一短があるので、自社の目的を踏まえた選択が重要になるだろう。