新EC法に関する整理

中国向けの越境ECに関連して、新EC法やそれに付随する輸入規制について質問を受けることが多いが、誤解も多い気もするので、一度まとめておきたいと思う。

新EC法とは?

新EC法とは、正式には「中華人民共和国電子商務法」と訳されており、2018年の8月31日、全国人民代表大会(国会に相当)常務委員会で可決され、成立し、2019年1月1日に施行されている。

この法律は、電子商取引に関わる事業者を定義しその責任や義務について定めている。具体的には、電子商務を「インターネットなどの情報ネットワークを通じて商品を販売、あるいはサービスを提供する経営活動」と定義し、「金融類の商品およびサービス、ネットを利用したニュースや音楽・動画番組、出版および文化商品の提供など」は対象外と明記した(第2条)。

また、適用対象として、「電子商務経営者」と「電子商務プラットフォーム経営者」を区別し、それぞれについて義務や責任、違反した場合の罰則などを規定した。

例えば、「電子商務プラットフォーム経営者」の責任として規定されているのは、「プラットフォーム内経営者」の資質や資格について審査を尽くさず、あるいは消費者に対する安全確保の義務を怠ったことで消費者に損害を与えた場合、法律に従い相応の責任を負うことなどが規定されており、プラットフォーム経営者に消費者保護のため管理責任を負うことになっている。

また、「電子商務経営者」が越境ECを行う際は、輸出入監督管理などの関連法律・法規を順守する義務を負うことも明記されている。

影響のポイント

この法律が施行された結果、これまで代行事業者としてハンドキャリーで商品を持ち込み販売していた事業者・及び個人について、商品の販売する際使用するECサイトを運営するプラットフォーム側から厳しく審査・管理されることになった。

また、代行事業者も関税の支払いを逃れたり、国内の各種税金の支払いを逃れることに罰則が課されることになった。

その結果日本の店頭で商品を購入していた代行事業者による店頭購入が減少していることは以前の弊社の記事でおまとめさせていただいている。

中国市場注目ニュース 新EC法の影響が顕在化

一方、この代行事業者が縮減した結果それに変わるような新たなサービスも出てきているうようなので、それも別途ご紹介していきたいと考えている。

誤解?が発生しているポイント

この新EC法の影響で、中国保税区越境ECに関する輸入規制も強化されているような質問をいただく。

ネットの記事の中には、新EC法が可決された時点で、そうなるのではないかという予測記事も出ていたようだ。

しかし、実際には保税区における輸入規制について定めているのは、2016年4月8日から適用されている、いわゆる「新越境EC制度」であり、この法律とは別の物になる。この新越境EC制度では、保税区における優遇関税、ポジティブリスト等が定めらているが、適用当時急激な変化になっため、一部内容について毎年適用が延長されてきている。2018年初頭には2019年からは同制度を完全適用する予定であったが、2019年初頭に今年も1年間適用を延長することが決定されている。

そのため、特に影響が大きい、化粧品のCFDA取得については、保税区を通じた販売であれば不要といった優遇が2019年時点でも受けられている。

化粧品のCFDAの取得については、一部制度が審査制から届出制に変更されるなど、簡素化も進んでいるようだが、実務上はそれによって取得期間が短縮されてきたというような声はまだ聞かれてない。

しかしながら、この優遇措置が来年も延長されるのかどうかは依然として不明確なため、そこに対する備えも進めておくべきであろう。