中国進出の基礎知識 中国進出の四つの方法① インバウンドでの販売

中国進出とは

中国への進出というと中国国内に法人を設立し、現地で商品を販売することを真っ先に思い浮かべるかもしれない。

しかしながら、現在はこの方法限らず、大きく分けると4つの方法で中国人消費者へ商品を販売することができる。また、この4つの方法の特徴を見極めてうまく活用することが非常に重要である。

中国進出の4つの方法

中国進出の三つの方法とは、①インバウンドでの販売、②越境ECでの販売、③一般貿易を通じた現地販売店での展開、④現地生産・現地販売での進出の4つである。

インバウンドは進出とは呼べないかもしれないが、日本国内であっても中国人消費者に販売していくには日本人に販売するのとは異なる取り組みが必要になってくるし、②以降の方法を実施する上でも前提ともいえるべき方法なので、我々はインバウンドも進出の一つの方法として捉えている。

今回はまず、インバウンドでの販売方法の特徴を見ていきたい。

インバウンドでの販売とは

インバウンドでの販売とは、日本国内の小売店で、中国からの訪日旅行客へ商品を販売することである。中国人訪日客は2018年で830万人にまで増加し、日本滞在中の買物金額は、年間合計で9000億円程度と推計されており、爆買いは過ぎたとはいえ、他の国の消費額に比較すると圧倒的に巨大な市場となっている。

中国人インバウンド市場の詳しい分析記事はこちらから

インバウンド販売の特徴① ソーシャルバイヤーの存在

インバウンドでの販売の大きな特徴の一つは、ソーシャルバイヤー(代講)による購買の存在があげられる。

ソーシャルバイヤーとは、SNS等で個人客を募り、彼の要望する日本の有名ブランド商品(多くは、化粧品や美容雑貨、菓子等)を日本の主には店頭で購入し、中国国内にハンドキャリーで持ち込み、転売する個人を中心とした業者のことである。

ハンドキャリーなので、多くの場合、空港税関で関税を支払うことなく通過するため、日本の店頭の割引価格で購入した場合、メーカーの正規の中国国内の代理店が輸入し店頭販売している商品よりも価格を安く提供できていた。そのため、このソーシャルバイヤーによる転売が人気を博していた。

しかしながら、2018年の11月に新たに施行された法律により、個人が海外製品を持ち込んで販売するには、登録が必要になり、違反者へは厳しい罰則がつくことになった。

また、空港で飛行機の乗客全員を見せしめのように一斉摘発を実施したため、ソーシャルバイヤーの転売行為が自粛されているようだ。

実際、2019年に入って国内化粧品やオムツなどの生活雑貨企業の国内実績が減少しているという報道がなされている。(詳しくはこちら

一方、中国国内ではソーシャルバイヤーが世紀販売活動を行うための登録の申請待ち数が千件もあるとの報道もあり、申請後に再び転売事業が行われる可能性もあるため、この需要の縮小が一時的なものなかどうかは見極めていく必要があるだろう。

ソーシャルバイヤーが好むのは、主に有名企業の商品だ。そのため、これから中国に進出したいと考える企業の場合、最初から彼らに購入してもらうことは難しいだろう。

しかしながら、どういった商品がよく売れているのか、非常によく知っているといこともあるため、その観点で彼らを活用する手段は出てくると思われる。

インバウンドでの販売の特徴② 販売チャネルの選び方と販促方法

インバウンドで中国人消費者への販売の特徴の二つ目として、販売チャネルの選定があげられる。

主な販売チャネルとしてまず思いつくのは、百貨店、家電量販店、ドラッグストア等ではないだろうか。これらの販売チャネルは、主に個人旅行客や上記のソーシャルバイヤーが購入先としている店舗となる。

こちらの店頭で商品を販売するためには、当然店頭での棚の確保や中国語向けPOP等が必要はあるが、それ以上に重要なことは事前に当該商品の評判を高めておくことだ。

詳しくはこちらの記事を参照いただきたいが、中国人消費者は口コミの影響を踏まえ、事前に買物リストを作成して買い物をするので、その買い物リスト入りが重要になる

一方で、団体旅行客については、旅行会社との提携が非常に重要になる。こちらについても、以前のこちらの記事で詳述しているので参照いただきたい

インバウンドで販売を行う意義

インバウンドで販売を行う意義は大きくわけて三つある。

①中国人への販促の第一歩

まず、日本国内の店頭で中国人の目に触れること、これ自体が大きな販促になるだろう。

指名リスト入るためには、中国国内での販促だけでなく、日本の店頭で実際に見て試しに買ってみてよかったことがきっかけになることもあるだろう。

実際に日本で購入したことをきっかけに、越境ECでリピートするようになったという調査結果が出ている。

また、後述のように商品の規制や物流の制約等もないため、中国人への販売のスタートしては一番敷居が低い。ここでまず自社の商品自体が中国人にマッチするのかどうかを検証していくことが第一歩だろう。

②越境ECバイヤーや現地小売バイヤーと交渉するための実績づくリ

日本のインバウンドで売れているという実績は、この後の越境ECや一般貿易のバイヤーと交渉する上でも大きな武器になる。

また、大手の越境ECモールや有名KOLを販促に活用しようとすると、日本での販売実績をほぼ問われる。越境ECや一般貿易を考えているのであれば、まずはインバウンドでの実績を確立する方が、後々有利に進めることが可能になる。

③投資の見極め

越境ECや一般貿易はインバウンド市場以上に巨大な市場である。

しかしながら、中国国内への商品を持ち込むことになるため、一部の商品については輸出できない商品も出てくる。輸出するにも現地の輸入許可や認証の取得を求められる商品もあり、その場合その許可を取得するだけでも一定の投資が必要になってくる。

そのため、インバウンドでの需要の状況を見極めることで、その投資を行う価値があるかどうか、判断する材料になるだろう。

以上今回はインバウンドによる販売方法の特徴を見てきたが、次回は越境ECによる販売方法についてみていきたい。