実践!DX時代の初めてのプロジェクトマネジメント 

第1回 成功するプロジェクトマネジメント

はじめに

昨今、DXに向けた企業の取り組みが加速してきていることもあり、数多くのプロジェクトが社内で立ち上がってきているのではないだろうか。一方、社内における人材不足から若手であってもプロジェクトリーダー(以下PM)としてプロジェクトのマネジメントを任されることも増えてきているようだ。

ここでは、これからPMやPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を担当することになった人を対象に、プロジェクトマネジメントを成功させるための基本的な要素についてお伝えしていきたい。

プロジェクトマネジメントとは何か?

まず、プロジェクトマネジメントとはどのようなものだろうか?

一般的には、「プロジェクトの成功に向けて、コスト、スケジュール、品質の優先順位をつけていくこと」だと定義される。しかし抽象度が高く、初めてPMとなった人にはピンきずらいかもしれない。

もう少し具体的なイメージで考えてみたい。プロジェクトには実行の前に、大概計画があるものだ。その計画通り推進できれば何の問題もないのだが、大抵は予期せぬ事態や、計画段階では詳細化できていなかった課題などが立ち塞がる。

プロジェクトの成功を目指した決断がここで必要になるわけだが、一口に成功と行っても、実際にはプロジェクトの成功条件は多岐に渡っており、また同時にそれらを満たすことはほぼ不可能だ。決断は取捨選択を伴うものであり、それによって影響を受けるステークスホルダー(特に優先されない側)
とコミュニケーションをとり、納得してもらいながら推進することは実に骨の折れることだ。

プロジェクトには目的があり、目的に沿って定めたビジネス上の成果が当然あるはずだ。それを達成するのがまず最優先である。しかし、これ以外にも付随してプロジェクトオーナーやユーザから様々な追加の要望などがなされることが珍しくない。

このような要望を叶えれば彼らの満足度を上げることにつながるが、一方でコストの増加やメンバーの業務負担増加、あるいは納期への影響なども発生する。これらの観点を総合的に整理・検討し、要望を受け入れるのか、拒否するのかを判断しなければならない。

要望を受けない場合、納得いただくだけの説明も必要だ。説明・説得するのが面倒で安易に引き受けてしまうと、後々プロジェクトの遅延などにつながることもありうる。また、引き受ける場合、メンバーや協力会社が納得して推進してくれるかどうかも重要な要素だ。

メンバーが健康的に、かつ高いモチベーションを持って取り組めることや、プロジェクトを通じて成長して行ってもらうこともプロジェクトの成功を図るもう一つの要素だと考えられる。

このように、ユーザ等プロジェクトオーナーの要求とメンバーの体力やモチベーションのバランスも図りつつ、当初の予算・スケジュールの範囲の中で成果をもぎ取っていく必要がある。このバランスをどうっていくのかを都度都度判断しなければならないところにプロジェクトマネジメントの難しさの一因があるだろう。

その意味では、プロジェクトマネジメントはこうすれば必ず成功するという黄金律はなく、都度状況に応じた判断を考える必要がある。これもプロジェクトマネジメントを難しくする要素の一つだ。

後述するが、プロジェクトの管理方法やプロセスは標準化してパターン化することが可能だが、プロジェクトにおける優先順位を決定する判断は、都度その状況に応じて行なっていく必要がある。その意味では、この基準に沿って判断すれば大丈夫というパターン化は難しいであろう。

発生した状況における、リソース状況やタイミング、あるいは発生した課題や要望の内容などに応じて、その都度優先するものを判断していくことが求められ、その度になすべきことは何かを考え判断することが必要だ。

判断を繰り返すことで、似た状況を蓄積し、勘を働かせていくことはできるだろう。経験値が上がることで、判断のスピードや的確性が向上してくとは思われるが、それでも状況に応じた対応が求められることには変わりはない。

これでも実際の経験して見ないと分かりずらいかもしれながいが、「成功に向けてなにを優先するべきか、(逆に言えば何を犠牲にするべきか)を都度決定し、その決定内容をプロジェクト関係者に伝え、納得してもらって、プロジェクトを動かしていくこと」がプロジェクトマネジメントそのものであるとここでは理解してもらいたい。

どのようにしてプロジェクトマネジメントを成功させるのか?

複数の視点や立場をバランスさせることや、パターン化できない判断というのがPJTマネジメントの難しいポイントであった。ではこれについて成功確率をあげられるようなマネジメントはできないものなのだろか?
そのためには、「意思決定・判断」とそれを支える「プロジェクト管理」の二つの観点でPJTマネジメントを考えていくことが大切だ。

意思決定判断とは・・・何を優先するかの判断

プロジェクト管理・・・プロジェクトの状況の可視化、判断結果の周知・徹底

意思決定判断については既に述べたのでイメージがつくだろう。ここではプロジェクト管理について説明しておきたい。

プロジェクト管理の目的はプロジェクトが計画通り進んでいるかを可視化し、遅延や課題、リスクなどを管理し、適切な判断主体に対して提示していくことである。また、判断がなされれば、その結果を関係者に周知・コミュニケーションしていき、プロジェクトの円滑な推進を支援するものである。

具体的には進捗管理、課題管理、などの管理を行なっていく。例えば進捗管理であれば、予定通り作業が進んでいるのか、計画と現状の達成度を比較し、遅延があればそのリカバリーをどう考えるのかなどを明確にしていくものだ。
 
プロジェクト管理の目的は意思決定をしていく上で必要な情報集、意思決定を内容を関係者に周知していくことで、意思決定・推進をサポートするものである。

大きな会社であればすでにプロジェクト管理標準として自社の独自ルールとして管理方法やプロセスが確立されている場合もある。もし社内にそのような標準がなければ、外部団体の標準を活用するでも良い。
このプロジェクト管理はパターン化してプロセス化手順化サイクル化することが可能だ。これによりプロジェクとの全容を把握し、早期の課題発見と判断に必要な情報収集やコミュニケーションルートを確立することで、より円滑な意思決定や判断が可能になる。
きちんとしたプロジェクト管理体系を適用して、それを適切に運用していくことがプロジェクトマネジメントの成功確率を上げる第一歩である。プロジェクト管理の実績方法については、この後の記事でも取り上げていきたい。

次回に向けて

ここまでプロジェクトマネジメントの難しさとその難易度を下げて成功確率を上げるためのプロジェクト管理について概観してきたが、次回以降はプロジェクトマネジメントの具体的なステップについて概観し、より具体的な実践方法について掘り下げてみていきたい。