中国市場攻略戦略を考える

1 アクセスが容易になってきた中国(人)市場

爆買いという言葉こそ鎮静化しましたが、中国人観光客は、インバウンドでの買物で他の国と比較すると圧倒的な金額で買物をしています。メーカーであれば、インバウンドでの需要を取り込みたいと思うのが当然ですし、可能であれば帰国後に中国国内からも自社の製品を購入してもらいたいと考えている方も多いと思います。

実際、越境ECという一般貿易との中間的な位置付けの販売方法が整備されてきたことで、簡易な手続きにて中国国内に販売できるようになってきました。

中国国内の市場へも比較的容易にアクセスできるようになったことは喜ばしいことですが、そこに出店・出品したらすぐ売上が上がるのか、というとそういうわけではないようです。これは日本でECに出店・出品してすぐに売上があがるかというとそうでないのと同じことです。また、越境EC自体の出店・出品のハードルも上がってきています。(この点はまた後日別のところで述べさせていただきます)

2 中国人販売への壁

メーカーからすると、インバウンド・越境EC・一般貿易と三つの方法で中国人に対して販売することが可能になるわけですが、この三つの販売方法の使い分け方が中国人向けの販売では極めて重要になると考えています。

この三つの販売方法では、異なる点はいくもあるのですが、共通して言えるのは非常に厳しい納入価格を提示される点です。いわゆる、売れ筋と呼ばれる日本の有名メーカーの商品なら別かもしれませんが、これから中国人市場への販売を考えるメーカーであれば、いくら日本での実績があっても、厳しい納入価格からスタートとなります。伝え方が悪かったりすると、日本での販売実績があったとしてもそもそも取り扱いに興味を持ってもらえなかったりすることも多いでしょう。相手側の担当者は中国人だったりするので、交渉も上手ですし、集客力のある免税店や大手の越境ECモールのバイヤーは販売力を武器に強気の交渉を仕掛けてきます。

高い納入価格に対して、ここで販売を断念している企業を多く見受けます。

出品ではなく、越境ECへの出店の場合はどうでしょうか。タオバオグローバル等への出店は比較的容易だと思いますが、T-mall国際等信用力の高い越境モールは現在出店自体を制限していたりもします。仮に出店できるとしても、煩雑な手続きに耐え出店し、出店後は一定の運営コストと販売手数料を負担する必要があります。その意味では、そのコストを考えた時に採算が取れないと思い断念する企業も多くみてきました。

この最初の壁を突破できるかどうかは、中期的なシナリオ=戦略を持ってこの市場に向かいあうことができるかどうかにあると我々は考えています。

3、どこで力をつけて、どこで売らせてあげるのか?

壁を突破するためには、実績を積み上げ消費者の認知と信頼を獲得し、小売に対する交渉力を高めていく、ということ以外にはないと考えています。おそらくこのことは、日本国内では当たり前のことなのでですが、対中国人市場について向き合う時にそのことを忘れてしまうメーカーさんは多いようです。日本からの情報がほぼ全く遮断されている中国人市場において、これまで日本市場で積み上げてきた信用や信頼があったとしても、それを改めて中国人に伝達しないと全く伝わりませんし、それはまた0からのスタートを意味しています。

現在、インバウンド、越境ECで人気のある大手のメーカーさんも何年も前から自社のブンラドを中国人にコミュニケーションするために多くの投資を行なってきているのが実態です。

しかし、現在は当時とは異なり流通事業者の数も増えていますし、技術革新の力でより効率的な販促方法が増えてきており、大手ほどの莫大な投資がなくても、うまく自社のブランドを伝達していく機会は十分にあると考えています。

ただ、それらのHow toにすぐに飛びつくのではなく、販路戦略・流通戦略がまずあるべきだと我々は考えます。

つまり、実績だすための販路として割り切り、中国の消費者への認知度・信頼性を高めるためのチャネル(「置いてもらう」販路)と、その実績を武器に納入価格について交渉し、メーカーが稼ぐ販路(いわば「売らせてあげる」販路)を区別してアプローチすることが重要であると考えてます。

例えば、国内の免税店はガイドや販売員が直接販促をかけてくれるので、納入価格は厳しいですが、自社商品の認知を広げるのには、絶好の機会ですし、実績も出せます。そのため、そこは販促のチャネルとして割り切る。そして、越境ECや自社サイトでのリピート需要で儲ける、といった戦略は典型的なアプローチ方法として活用できます。

但し、販路ごとの制約や手続きをよくよく検討しておくことが必要です。例えば、越境ECであれば、日本直送であれば国際送料がかかってしまいますので、送料負けしないような単価の商品である必要があります。保税区方式を活用するにしても、一定の在庫リスクが発生しますので、そのリスク負担についてもあらかじめ検討しておく必要があるでしょう。一般貿易であれば、輸送料の負担を抑えることが可能ですが、一定の需要見込みの可能性を創出する必要もありますし、前提しての輸入許可申請が必要なものもあります。

商品の価格や特性によっては、規制・手続き面のクリアのためには時間を要するものもでてくるので、全体リードタイムの管理も必要となるかと思います。

自社の商品をどのような戦略・シナリオで中国人市場に望むのが適切なのか、弊社ではそういった疑問に答える「個別相談サービス」も引き受けさせていただいております。中国市場へのアプローチを検討されている方は時間短縮のためのも、そうしたサービスもご活用いただけたらと思います。