2018年インバウンド市場を振り返る 第4回 旅行形態別のアプローチ① 団体旅行客

中国人訪日客の旅行形態の変化

2018年1月―12月の訪日外国人客数がついに3000万人を突破したが、その中でも中国人訪日客が数の上でも、成長性でもトップクラスである。また、日本国内の買物で消費している金額も、圧倒的に巨額である点ついても既に述べた。

では、今回はこの中国人訪日客にどのようにアプローチしてくのかについて考えてみたい。

アプローチを考える上でヒントになるのが、旅行形態の違いである。

旅行形態には大きく分けて、団体旅行と個人旅行があり、それぞれで日本国内での購買行動が大きく異なっており、アプローチを変えていく必要がある。

出典:「観光庁(訪日外国人消費動向調査2018年全国調査結果(速報))」を元にビズグロー分析

こちらの図は旅行形態別の中国人訪日客数の推移を示したものである。近年の中国人訪日客数を押し上げている要因は個人旅行であることがわかる。しかし、一方で団体旅行客数も減少に転じるのではなく、微増している点も注目に値する。

団体旅行客の旅行形態

団体旅行と個人旅行では、まずビザを受ける際の条件が異なっている。個人旅行ビザの方が資産等の条件が厳しくなっている。ただ、年々発給される基準は緩和されてきており、その点も訪日客数を増加させている大きな要因となっている。

団体旅行での訪日の方法としては飛行機とクルーズ船があり、最近増えているのがクルーズ船での訪日と言われている

クルーズ船は、1船で3000人程度が乗船していると言われており、主な寄港地は沖縄・九州となっているようだ。下記は国土交通省によるデータであり、中国以外の国籍も含んだデータであるが、大きな割合で増加しているのがわかる。

クルーズ船旅行が増加している背景には、ビザの発給が免除されていることに加え、旅行代金が非常に安いことにある。そのため、中国内陸部の中間層を中心に人気が高くなってきていると言われている。

団体旅行客の購買行動

団体旅行の最大の特徴は、飛行機であろうが、クールズであろうが、国内での移動は大型バスでの移動が基本であり、訪問先は旅行会社が決定しているという点である。

そのため、団体旅行客の訪問しているレストランや観光地は旅行会社と連携の取れている先に限定されているし、ショッピングを楽しんでいる場所も当然限定されている。

ショッピングで言えば、爆買いの象徴となったLAOXをはじめとする、複数の大規模免税店チェーンにほぼ限られていると見ている。弊社の独自の調査・推計によると、この複数の大規模免税店チェーンだけで、2000億円〜3000億円程度の買物がなされているものと推測しており、中国人訪日客の買物消費の約3分の1程度が消費されているとみている。

巨大な規模を誇る団体旅行客の市場だが、一般の企業がアクセスするのはハードルが高いのも事実だ。これらの免税店で販売されている商品はほとんどが免税店のPB(プライベートブランド)だ。

メーカーのオリジナルブランドを展開できる余地がないわけではないが、免税店はこれらの集客のための費用を賄う必要もあり、納入価格は厳しい条件となることが殆どだ。

ただ、この市場では商品の説明やお勧めする役割をガイドが担っていることがあり、中国人に認知が低い商品でも一気に認知を高め販売できる可能性がある。この点は次回の個人旅行客へのアクセスとの比較の中でまた説明して行きたい。