「爆買い」という言葉が生まれたのは2015年2月ことでした。この年の春節休暇に日本を訪れた中国人観光客が高額商品から日用品まで様々な商品を買い込む現象から生まれた言葉でした。しかしながら、翌年の2月(春節の時期)には、1人あたり購入額は半減し、爆買いは終了したことになっています。
その後、メディアでは訪日中国人観光客の購買行動についてあまり取り上げられなくなっているようですが、弊社が免税店等で見かける訪日中国人観光客のインバウンド消費における購買力は依然として圧倒的な力を持っているようにみうけられます。そこで、観光庁のインバウンドの消費統計等も活用しながら、訪日中国人観光客のインバウンド消費における購買力・購買行動がどのように変化してきているのか見ていきたいと思います。
このグラフは、2015年、2016年、2017年の訪日中国人観光客の方一人あたりのインバウンドにおける購買金額の集計です。純粋に「買い物」に使用した金額だけの集計で、体験サービスや宿泊・観光などのサービス消費に使用した金額は含まれていません。
確かに1人あたり購入金額でみると、2015年から2016年にかけて25%程度、急激に落ち込んでいますが、2017年にかけては5%減の微減に留まっています。
一方、訪日中国人観光客数は、2015年の499万人が、2017年には735万人に増加しています。
因みに、中国からの年間の海外旅行客数は2016年時点で1億3000万人以上と言われています。(そのうちの約49%が香港・マカオ・台湾への出国が占めるようですが)それでもパスポート所持率は10%程度と言われており、日本の半分以下の保有率のようです。そのため、今後中国からの海外旅行客数はまだまだ増加するという予想が、調査会社のレポート等をみると多く見受けられます。
こちらは、「1人あたり買い物金額」と「訪日客数」を掛け算して出した、訪日中国人による「買い物」に絞った、インバウンド消費額の合計です。
2016年に一体落ち込むものの、2017年には2015年を超える規模へと成長していることになります。2016年との比較では約10%程度増化したことになりますし、「爆買い」で賑わった2015年の規模を2017年は上回ったことになります。
1人あたりの購入金額は確かに減少しているものの、訪日客数が増えているので全体の市場規模は増加しているわけです。
この市場の規模感はどの程度のものなかのか、他の国の買い物金額と比較してみました。
驚くべきことに、買い物金額全体の約50%以上を訪日中国人観光客が占める計算になります。2位は台湾ですが、全体のシェアは10数パーセント、3位は韓国で約10%程度です。インバウンド消費、特に、「買い物」に限ってみると、中国人観光客が圧倒的な力を持っていることがよくわかります。
2015年の爆買いの印象があまりにも強烈でメディでも何回も報道されました。近年はメディアで取り上げられる回数は減ってきているかもしれませんが、インバウンドにおける「買い物」消費全体では訪日中国人観光客の影響力は益々高まってきているのです。インバウンドでの販売を考える際に、やはりこの中国人の購買行動は無視することはできないですし、今後の観光客数の増加も予想されることから益々重要性は高まるのではないでしょうか。
次回以降、この「訪日中国人観光客のインバウンド消費」について、同じ統計等を活用しながら、どんなところで、どんなものを購入しているのか、その傾向についても見ていきたいと思います。