2018年1月―12月の訪日外国人客数がついに3000万人を突破したが、その中でも中国人訪日客が数の上でも、成長性でもトップクラスである。また、日本国内の買物で消費している金額も、圧倒的に巨額である点ついても既に述べた。
今回は前回に引き続き、この中国人訪日客のうち、個人旅行客へどうアプローチするのかについて考えてみたい。
前回も掲載したこちらの図は旅行形態別の中国人訪日客数の推移を示したものである。近年の中国人訪日客数の約7割は個人旅行客となっている。個人旅行客とはFIT(Foreign Independent Tour)と略されることも多く、欧米からの訪日客の8割―9割はこのFITになっており、その意味ではまだ中国人訪日客におけるFITの比率は低いと言えるが、今後その比率が高まって行く可能性は高い。
FITの旅行の特徴は、団体旅行と異なり、自ら訪問先を決定できる点にある。団体旅行の場合、少なくなったとは言え、依然として東京から富士山を経由し京都・大阪をめぐる旅や、九州を周遊するクルーズの旅が多く、その行き先は限定されている。しかしながら、FITの場合は自ら訪問先を決定できるため、自分がインターネット等で探して訪問してみたいと思った場所や、体験を目的にした旅行が組むことができる。
もう一つの特徴として、こうしたFITの多くは訪日旅行のリピーターであると言われている。リピーターの割合は、韓国や香港などは初回訪問者の割合が20−30%に過ぎないのだが、訪日中国人の場合はまだ55%程度が初回訪問客であり、今後リピーターの比率が高まって行くと予想される。
FITに限らず、中国人の消費行動には「口コミ」が大きな影響を与えている。JETROが2018年に実施している中国人消費者の意識調査に、訪日時の消費行動を決定する情報源についてアンケート調査がなされている。
それによると、最も消費行動に影響を与えているのは「在中国の親族・知人」で53%、次が「旅行会社」で44%、「在日本の親族・知人」で42%、となっている。「ウェブサイト、SNS」は15.7%と意外と低いが、これでも2017年の調査の倍以上に増加している。
前回団体旅行の回で述べたが、団体旅行の場合は旅行に同行するガイドが消費行動に大きな影響を与えている。免税店で販売されているプライベートブランドの商品も、同行する旅行ガイドがその商品を詳しく解説することで売れている実態がある。JETROの調査で2位に旅行会社が入っているのはこのガイドによる推奨の影響ではないだろうか。
一方、それ以外の場合の多くは、周囲の人間もよく知っているような商品でないとなかなか購入されないということも表しているのだろう。よく、中国人旅行客は事前に買い物リストを作成、それに基づき購入していくと言われている。実際店頭での行動を見ていると買いたいものは決まっており、それを必死に探して購入している姿をよく目にする。
その意味では、訪日前に事前にその商品の認知度を高めるような取り組みを図ることは非常に重要性が高いと言える。それも、その商品の良さが「口コミ」となって広がっていくような取り組みが重要と言える。
ただ、その買い物リストに記載されていないとチャンスがないのか、というと必ずしもそうではない。残念ながら、統計データは見つからないが、訪日時の店頭で店員がお勧めする商品を購入している姿も我々はよく見ている。また、日本人が購入している商品を購入したがる傾向も強く、知らない商品であっても、日本人向けに店頭で大きく販促されている商品に挑戦する傾向もある。
その意味では、まず日本国内で中国人訪日客が多く訪れる店舗で商品をきちんと並べ、中国人に理解される販促を行うことは重要なことだろう。そこでの反応をきちんと把握し、中国人消費者に受け入れられる可能性があるのかどうか、見極めた上で次のステップに進むのも一つのアプローチであろう。
中国国内のSNSやKOLへのアクセスが一頃に比較し容易になってきたため、いきなりKOLの活用やSNSでの情報拡散を求める事業者様も多くなってきているが、まずはその商品が現在の中国人のニーズや指向性に合致しているのか、その見極め行った上でないと、そのようなプロモーション施策も空振りに終わってしまう。
中国人へのアプローチであっても、日本人へのアプローチとそれほど大きく変わるわけではないことを忘れに取り組むべきだろう。