中国市場注目ニュース 新EC法の影響が顕在化

2019年2月21日 東洋経済オンライン

好調だったメリーズが、ここにきて陰りが出始めているのはなぜか。理由は、花王が事前に予測しなかった2つの出来事が降りかかっているためだ。

その1つが、中国政府によるソーシャルバイヤー(転売業者)に対する規制だ。今年1月に現地で「中華人民共和国電子商務法」(通称:EC法)が施行され、ソーシャルバイヤーには営業許可証の取得や納税義務が課されることになった。これにより、昨年後半からソーシャルバイヤーは日本製品の買い控えを続けている。「EC法をにらんだ動きが昨年9月から始まり、とくに年末にかけ、顕著に出てきた」(澤田社長)。メリーズはソーシャルバイヤーから人気が高い製品のため、買い控えが販売に打撃を与えたとみられる。

予測しなかった出来事の2つ目が、ソーシャルバイヤーによる在庫の「たたき売り」である。ソーシャルバイヤーはメリーズの在庫を大量に抱えており、「その在庫を吐き出すために、個人商取引が行われているECサイトにどんどん出品した」(花王の広報)。すると、花王が正規ルートのプラットフォーマー(IT企業)を通じてECサイトで販売する製品と価格差が広がり始めた。

プラットフォーマーは花王に対し値下げ圧力をかけてきたが、「メリーズのブランド力維持のため、それには答えなかった」(澤田社長)ため、ECサイトでの販売数量が減少した。

以上抜粋

この記事のポイント

今年から施行されたEC法の影響が早速顕在化した。これまでのインバウンド需要の中には、こうしたソーシャルバイヤーによる転売目的の購入が多く含まれており、その減少がインバウンドの依存度が高い企業の業績を直撃した形だ。

同じような影響はすでに化粧品業界でも現れているようだ。

絶好調から一転、「化粧品戦線」に異常あり

2月6日 東洋経済オンライン

今後、転売目的で購入されていた、健康食品や雑貨等の国内需要にも影響が出るものと考えられる。

ただ、これによりチャンスが広がる部分もある。

ソーシャルバイヤーは日本で店頭購入したものを、ハンドキャリーで持ち込んでおり、関税を支払うことなく現地の自分の依頼主たちに販売していた。それは、消費者にとっては、本物であるということに加え、一般貿易できちんと税金を正規ルートで入っている商品よりも現地では安い価格で購入できていた。

今後、こうした密輸品が中国市場に出回らなくなることで、正規代理店の正規品や越境ECへのシフトが進む面もあるだろう。

あるいは、本人が日本に旅行にした際のまとめ買いが増えるのかもしれない。

もしくは、価格の面から他ブランドの商品にシフトする消費者も出てくるだろう。

いずれにせよ転売市場に巨大な需要があった訳であり、これにより消費者行動がどのように変化して行くのか、早期に予測して対応して行く必要があるはずだ。

もう一つ注視したいのは、稼ぎをなくしたソーシャルバイヤーたちだ。

彼らはこのまま終わってしまうのだろうか。

顧客を抱える彼らは、今後はアフェリエイターとして販売の代行だけを担っていくのでは、という見方あるようだ。

ただ、密輸ができなくなった今顧客と同じ関係を築いていけるとは必ずしも限らないだろう。

中国人消費者の購買に強い影響を与えていた彼らの動向も注視して行く必要があるだろう。