今回は、中国進出の3つの目の方法である、一般貿易についてみていきたい。
中国向けの一般貿易とは、中国国内の小売店や国内のECサイトでの販売を目的にした取引になる。日本企業の直接の取引相手は、中国・もしくは日本貿易商が主なものとなる。取引形態として多いのは「国内渡し」であとは貿易商が輸出の手続きを行うといったケースが多いのではないだろうか。
一般貿易は、巨大な中国市場に直接アクセスできるという点では、ビジネス規模として大きな魅力を秘めている。しかしながら、簡易な輸入手続きが認められている越境ECとは異なり、正式な形で各種手続きを行う必要があるし、商品によっては、輸入許可を取得する必要がある。また、関税や輸送コストを考えるとある程度の数量をまとめて取引しないと採算が成り立ちにくい等の特徴がある。以下に詳しくみていきたい。
一般貿易を行うということは、中国の消費者に直接販売することが可能になり、中国本土の小売店の店頭に商品が並ぶということになる。越境ECのように限られたチャネルや顧客層ではなく、より幅広いアクセスが可能だ。例えば、現地のスーパーの店頭並ぶとなると、チェーン店であれば、中国国内に4000店舗ほどあるチェーン店などもあり、その一部で展開するにせよ大きな規模感につながる。また、若者層が多い越境ECとは異なり、幅広世代への訴求が可能になる。
越境ECで人気が出ている商品であれば、中国国内販売の第一歩として一般貿易での販売も検討すべきであろう。
ビジネスとしての規模が大きい、中国向け一般貿易だが、制限も存在する。まずあげられるのはその厳しい輸入制限のルールではないだろうか。
まず、食品であれば、東日本大震災の放射能汚染リスクを回避するという目的からいわゆる一都九県(福島、栃木、群馬、茨城、千葉、宮城、新潟、長野、埼玉、東京)に工場が所在する場合輸入ができない。近年、当該規制は緩和されるのではないか、という噂も聞こえるが、なかなか解除されないのが実情である。販売が可能なものについても、中国国内で販売するためには、商品背面ラベルの張替えが必要になってくる。これは、政府機関へ申請を行い許可が得られたラベルを1件1件に張り替える必要があることから、コスト的な観点からも留意が必要である。
中国人消費者に人気の化粧品については、中国に初めて輸入される化粧品は、その生産者および代理人が、輸入地の国家食品薬品監督管理総局(CFDA)に輸入化粧品衛生許可証明書を申請・取得する必要があるとされている。この証明書の取得に際して、外国企業からの申請であれば、半年以上の期間と費用が必要になる。
健康食品については、食品として輸入が認められるものもあるが、粒状のものは「保健食品」としての輸入許可を得る必要があり、こちらもCFDA同様の許可が必要だし、中国国内でまだ認められていない材料であれば、新材料としての登録も必要であり、1年から2年の登録期間と相応の費用が必要になってくる。
その他、家電製品であれば、3C認証が必要など、各商品カテゴリごとに輸入の規制があるため、自社の商品に応じてどのような対応が必要かあらかじめ確認する必要がある。
ルールを確認することに合わせて、もう一つ考慮しておくべき点は、一般貿易としてのビジネスが成り立ちうる商品かどうかという点である。
中国国内の店頭に商品が並ぶというのは、規模が広がる一方、多くの現地商品との競争に晒されるということである。現地には同様の現地価格の商品があることもあるだろう。安い商品を凌駕する圧倒的な品質や差別化ポイントが存在していれば、問題ないがそうでなければ価格競争に晒されることになる。
一方、輸出に際しては関税や通関・物流費用が必要になるわけで、そうすると日本上代よりも高い価格での販売になるだろう。その際果たして価格競争から脱して販売できる商品になっているだろうか。
そうした上代・下代の制約を考えると、一定の規模がないと採算が成立しないケースが一般貿易の場合多くなる。そのような数をどのように捌いていけるのか。捌いていけるだけの実力のある商品なのか。
自社はメーカーで日本国内渡しなので、関係ない、とは言えず、間に入る貿易商の採算も成り立たないと継続した取引にはならないだろう。
これらのリスクを回避するための方法としては、進出方法その④、現地生産というパターンが出てくるが、それはまた次回以降詳述したい。
見てきたように、一般貿易の場合は、ビジネスの規模感としては大きいものの、輸入制限ルールや採算性を考慮した商品選定や規模を考量する必要があり、一筋縄では行かない部分もある。そのため、やはり日本国内でのインバウンドや越境ECでの実験・実績づくりが重要になってくるのではないだろうか。商品の可能性を見極め、一般貿易の初期段階においては、一定のリスクをとって行く必要があるだろう。